2021年2月21日日曜日

ミモザの季節

広島市現代美術館でのまじわるいとから3年がたちました。山喜多二郎太と髙木秋子展、福岡女子大での展示からは約4年ですね。時間がゆがんだりとまったり、急に流れたりするような1年を、みなさまどうお過ごしでしょうか。

先日、お花屋さんの店先のミモザのリースをみて、この作品を思い出しました。春は、またやってくるのですね。

この週末、そのミモザを買いに行こうと思ったら売りきれていまして、残念に思いつつも大振りのヤナギを買って帰りました。私は元気です。また皆さんとお会いし、ともに作品をみたり、飲んだり食べたり語ったりすることができるときを待っています。

ミモザの季節

1995 木綿地風通織着物 日本伝統工芸染織展 東京都教育委員会賞
福岡県立美術館蔵 写真:片山 文博

2019年5月6日月曜日

博多織作家 脇山俊明さん

おりおりのおり で展示されていた作品の中で、心に残りここに残しておきたいと思った作家がいます。博多織作家 脇山俊明さんです。

重要無形文化財の小川規三郎先生の隣に展示してあった銀と水色、緑が瑞々しい新しい博多織が脇山さんの作品でした。

小川先生は、個性的な性格の秋子さんとも仲が良くしていただいた方で、大きな心で秋子さんを受け止めてくださっていたように思います。展覧会でお会いするたびに、思い出(創作の話を聞きたいのに、一日雨戸が動かない話で終わった、といった)を私にも明るく聞かせてくださっていました。

そんな小川先生がこの冬の伝統工芸展でとても気落ちされていたと、母が語っていました。亡くなったんだ、亡くなったんだと繰り返していたけれども、詳しくは聞けなかったと。その方が脇山さんでした。まだ40代ではなかったでしょうか。急病であったようです。

展示されていた作品からは初夏の渓流のようなみずみずしさ、さわやかさ、かつ力強さを受けました。小川先生は、時には赤や紫など強い色を伝統的な博多織の柄に織りこまれるのですが、その雰囲気とは異なっていました。おそらく、ご自分の世界を作られはじめており、師である小川先生は頼もしく思っておられたのだろうと思います。

博多織ディベロップメントの2期生だった脇山さん。最後の力を押して通っていた秋子さんとも、おそらく触れ合ってくださっていたでしょう。秋子さんはなんといって迎えいれたのでしょうか。

受賞・入選作品へのリンクを紹介したいと思います。
おりおりのおり、博多織もご注目ください。

日本工芸会作品一覧
https://www.nihonkogeikai.or.jp/works/9166/

ご自身のブログ織々徒然
http://kusukuma.blog26.fc2.com/blog-category-1.html


【展覧会レポ】おりおりのおり 四季と着物の折と織

4月に福岡県立美術館で開催された常設展『おりおりのおり~ 四季と着物の折と織』に行ってきました。担当学芸員の中島さんのお話もお忙しい中伺うことができ、充実した時間を過ごすことができました。お話を思い出しながら、会話形式で展覧会の紹介します。

ー今回のテーマ、絵画と着物を選ばれたきっかけは?

絵画を好きな方、着物を好きな方、それぞれを好きな方はいらっしゃいます。両方を展示することで新しい分野の魅力に気付いていただければと思い企画をしました。双方の分野への入門編となることを目指しました。

ー高木秋子の作品は、織の作品のなかでは最も多く展示していただいているのですが、それはどうしてですか?

この春から初夏にかけての季節を描いた作品となると、所蔵作品の中では高木先生の作品が最もよかったのです。季節の景色が、絵画のように作品から浮かんできます。絵画的作品であると考えています。

ー貴重な作品、珍しい作品もさりげなく展示されていますね。

そうですね、例えばこの山本作兵衛の代表作である「木枯らし」であるとか、高島野十郎の作品「人形」であるとか。「人形」は親族の娘さんのために描いた作品だそうです。野十郎作品では珍しい人物像もあります。

ー山喜多二郎太先生の作品ともまた再会でき、うれしいです。

楽しくなる、明るくなる作品ですよね。私も肩の力を抜いていいんだよ、日々のしごとを暮らしを味わおう、という気持ちになります。

ーたくさんのかたに来ていただけるとよいですね。

2階のディズニー展からは、、上がってきていただけるとよいなと思っています(笑)

ーありがとうございました。






2019年3月21日木曜日

おりおりのおりー福岡県立美術館コレクション展ー

大変ご無沙汰しております。

平成31年3月16日から6月23日まで福岡県立美術館にて
おりおりのおり 四季と着物の折と織」と題してコレクション展が開催されます。
https://fukuoka-kenbi.jp/exhibition/2019/kenbi10436.html

その中で髙木秋子の作品が前期4点、後期4点展示されることになりました。

前期:「ミモザの季節」、「桃花」、「菜の花畑」、「清流」  
後期:「夏至風」、「柳あおめる」、「麦秋」、「ちゅら、うりずん」

清流、柳あおめるは片経浮織、それ以外は木綿風通織です。
前期は5月12日まで、後期は5月14日までです。
入場料は一般210円、65歳以上の方などは無料です。

春から夏への季節を感じる展示となっております。
山喜多二郎太と髙木秋子展や福岡女子大の展示では公開されなかった作品もあります。私も作品集でしか見たことがない作品が多く、楽しみにしています。

よい季節となります。お散歩がてらお越しください。



                  柳あおめる 
               上 表面  下 裏面  
 
後期に展示される「柳あおめる」は片経浮織です。片経浮織は中国のチワン自治区の工芸品から秋子が考えた織で、裏面が平織り、表面が浮き織になっています。滅亡した蜀の錦にている、滅亡した人々がこの地まで追われおり続けたものではという言葉を秋子は作品集に残しています。
表と裏が2面ありその織は異なると点は木綿風通につながり、両面の違いが顕著なので秋子の織の技術をより伝えやすい作品と思います。

                        出典:作品集「木綿麗容」
                        撮影:片山 文博

2018年1月21日日曜日

交わるいと 「あいだ」をひらく術として 1

広島市現代美術館で3月4日まで交わるいと~「あいだ」をひらく術としてが開催され、高木秋子の作品が前期(2月4日まで)2点、後期(2月6日以降)2点、ヌイ・プロジェクトの作品とともに展示されています。

この展覧会をなんといえばよいのか。舞台や音楽を動画やCDではなく、直接舞台をみたときのような感じです。作品はそれ単独でとても魅力的なものですが、意図をもって配置することで、それぞれに新たな意味が宿るのです。謎解きのような気持ちで、作品同士のぶつかり合いを楽しんでいただければと思います。

秋子さんとヌイ・プロジェクトが展示されている空間のあたたかさは、忘れがたいものです。他者の評価というものをあまり見ることができず、つくる喜び、生きる喜びを大切にすること。それは時代を問わず排除されやすいことですが、その空間では昇華され、ゆるされ、人に喜びを与えているように私は感じました。
   
木綿地風通織着物 ミモザの季節 後期展示予定

       

2017年5月21日日曜日

「夜半の海」に決まりました

5月13日に、福岡女子大学のカフェ、Nanの木で、高木秋子展のお疲れ様会をしました。

会場アンケート、これからの女子大での展示、展示の良かった点、こう工夫したらよかったという展と話は尽きませんでした。最後に作成した展覧会の動画を理科の実験室というこの上なく福岡女子大らしい場でみて、さらに展示の工夫について議論をしました。

そして「無題」の通称名も発表です。

「夜半の海(よわのうみ)」に決めました。
夜深い、真っ暗な静かな海。あたりに人工の光はなく、ただまっすぐな月明りだけが海を照らしている。そんなイメージです。最も作品が表す光景に近いと思い、選びました。

百人一首のある紫式部の歌 巡りあいてみしやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな
にも、イメージを寄せました。最後、私たちに紹介する間もなく、作者が雲に隠れてしまった作品なので。

展示等に用いる正式名称は「無題」のままなのですが、これから通称として「夜半の海」を使わせていただきたいと思います。

最後まで「ニンガチェの波間」と悩みました。ニンガチェはおそらく沖縄の2月のことかと思います。書いてくださったかたは沖縄出身の方でしょう。とても印象に残る言葉でした。

そのほかにお多くの方にご応募いただき、ありがとうございました。





2017年5月13日土曜日

【展示情報(予定)】交わるいと 広島現代美術館12/22から

高木秋子の次の本格展示は広島現代美術館で今年12月末からになります。

 
広島現代美術館 特別展 交わるいと

展示紹介
『糸や布、繊維を素材にした作品は、工芸や美術といったジャンルを問わずたくさんあります。本展では16人の作家に注目し、彼ら彼女らが糸や布と向き合うことで生まれた作品の数々を紹介します。タイトルとなっている「いと」は糸であり意図でもあります。経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が交わることで布があるように、ひとりの作家の意図ともう一人の意図とが交わることでどのような空間が生まれるのか。8組の展示空間をつくりだします。』


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詳細はもう少し、会期が近づいて内容が定まってきましたらお伝えします。以下、竹口学芸員の展示のいとの言葉。

「福岡からも、工芸からも高木秋子の作品を切り離して展示してみたい。」

「6名の作家を2組ずつ組み合わせて、8コーナー設け、秋子さんも展示は現代の作家(チーム)と組み合わせてする予定」

「作家を選ぶ自分の基準として、『尋常でなく糸に時間を費やしている』というのがある。布という素材を使った現在作家はたくさんいる。でも、布という素材を使っているという基準ではなくてでなくて、糸というのに取りつかれたような人、そういう人のジャンルを超えた共演をしてみたい」

「ほとばしる情熱を内に秘め、小さな花の光と影を表現している と勿忘草の評価にある。その
情熱(狂気といってもよい)、影、そういったものが、感じ取れる展示にできるとよい」


写真はヌイプロジェクトの作品




2017年5月6日土曜日

【展示情報】九州芸文館 水辺にて

福岡女子大での展示は終わりましたが、高木秋子の作品展示は続きます。
来週からは九州芸文館です。

これからの季節にふさわしい水をテーマにした展覧会です。

水辺にて ―水をめぐる美術の世界 福岡県立美術館コレクション展


 【会期】 2017513日(土)~611日(日)
【会場】 九州芸文館 教室工房12
【入場料】 一般210円(160円)

詳細はこちら

高木秋子の作品は、片経浮織「清流」(後段中央) 他1点が展示されます。
山喜多二郎太の福岡の海も展示されます(*情報追記)

芸文館は広々とした空間、周辺の田畑と小川が美しく、これからの季節、お弁当をもって出かけるには最高の場所です。また芸文館内のレストランのランチもとても素敵です。ぜひ、お散歩に、ランチを楽しみに、そしてコレクションを楽しみにお出かけください。


工芸はそもそもの始まりからして社会性を持っている

よい天気ですね。無事、展覧会が終わり片付けながらぼんやり過ごしています。作った端からすぐ次、すぐ次と進んでいった秋子さんにはちょっと追いつきません。

広島現代美術館学芸員の竹口浩司さんの展覧会の感想がとてもありがたかったので、掲載許可をいただきブログにも転載します。

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先日ある工芸作家が語ってくれたこと。「作家は自らの表現に何らかの社会性を託さねばならない。つまり作品を社会に開くということだ。その意味では、工芸はそもそもの始まりからして社会性を持っている。なぜならそれらは用を満たしているのだから。しかし、そのことを意識してつくっている工芸作家は、近頃ではほとんど稀なように感じられ、とても遺憾である」と、そういうようなことだった。

昨日、福岡女子大学の図書館内で展示されている染織家・高木秋子さんの着物や資料を見て、その言葉を改めて胸に刻むことができた。絵描きを夢見ていた一人の女性が、戦争を通過して、織の道を志す。そのことを意味を、ぼくらは改めて考え直さないといけない。彼女が(福岡女子大学の前身である福岡県立女子専門学校で)学んだ家政学とはどういう学問であったのか、彼女がなぜしばしば沖縄の風物をモチーフにしたのか、彼女が風通織という織に見出したものはなんだったのか。

高木秋子さんのご遺族が中心になって企画された小規模な展示ではありながら、考えるところの多いものでした。会期は4月28日まで。関心のある方はぜひ。

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写真は昨年夏のフィンランド デザイン博物館です。写真撮影可能など、展覧会にあたって影響をうけました。
おしゃれな北欧デザイン、福祉の国は一方で1944年に多額の賠償金を背負って初めてようやく独立国家になった、資源も土壌も日照時間もすくない国でした。国が生き残るためものづくりをこころざしたのは、秋子さんがものづくりをこころざしたころと、同じ時期だったでしょう。
おしゃれな食器と展示してあるのは毒ガスマスク、マリメッコのワンピースと一緒にあるのは作業着です。ものづくりとは、デザインとはこの国にとってどういうものだったか。
忘れられない展示です。












2017年4月29日土曜日

御礼 福岡女子大学での展示を終えて

本日28日、無事展覧会の会場の撤収をすることができました。


企画当初から皆様に心配いただいた紫外線等による作品の痛みはありませんでした。また作品を2週間にわたり、(2日間以外は)直接の監視なく裸展示をしたのですが、何もありませんでした。触れる糸、布もすべて美しいまま戻ってきました。ひとえにおいでくださった皆様、また福岡女子大学の関係者、中でも学生の皆様の感性のたまものです。ありがとうございました。


今回の企画は、福岡県立美術館の展示を秋子さんの後輩に見てほしいなあという家族の気持ちが、つながり、あっという間に当初の想定から離れて広がりはじまりました。


あいさつ文のため協力いただいたみなさんをあげていくと、びっくりするほどたくさんになりました。
また来てくださったみなさんが、それぞれ考え、感じ方を広げていく様子から、高木秋子という作家が、もうすでに亡くなっているにもかかわらず広がり成長していくように感じました。本人はどう思っているでしょう。


改めて、高木秋子にとって、また私たち家族にとっても貴重な展示の機会をくださった梶山学長他大学関係者の皆様、窓口としてともに奮闘いただいた森田教授、仕事を超えてサポートくださった福岡県立美術館魚里課長、アイデアと笑顔をくださったアートマネジメント講座のみなさん、そしてデザイン、カメラ、そしてマネジメントと全面的にサポートしてくださったアートプロジェクト「くすかき」のみなさん、ありがとうございました。


次は早速来月5月13日から6月11日まで、筑後市にある九州芸文館の「水辺にて」という特集で、福岡県立美術館所蔵の2点(清流、凪)が展示されます。


また、12月22日からは広島市現代美術館(MOCA)の大型企画 交わるいと で取り上げられる予定です。福岡から、また工芸からさえも切り離して、現代アートのひとつとしての展示を試みる予定とのことで、とてもとても刺激的な展示になりそうです。


これからもよろしくお願いします。






自己紹介

2016年秋福岡県立美術館で開催されるコレクション展Ⅱ[山喜多二郎太と高木秋子展の個人的紹介ブログ。高木秋子の家族が書いています。管理人mai